翻訳をやってみたい、あるいはやり始めたけれど、どんな風にやればいいのかイマイチわからない。そんな方々に翻訳のコツをシェアしたいと思います。
翻訳家のライターさんからアドバイスいただいたおかげで、翻訳というものが少しづつわかってきました。
では今回は、英和翻訳のコツについて書かせて頂きます。
余分なワードを省き、いかに読みやすくするか
英語を日本語に訳す。といえば、中学校や高校の英語の授業を思い出す方も多いのではないでしょうか。
単純な作業に思えますが、実際には、学校でやった英訳問題と、翻訳とでは大きな違いがあります。単に英語を日本語にするだけでは、翻訳とは言えないのです。
例えば
“The weather is fine today, so I go shopping with my wife.”という文章があったとします。
これが学校の問題であれば、
「今日は天気が良いので、私は妻と一緒に買い物に行きます。」
と書けば、正解です。非の打ちどころのない、完璧な答えでしょう。
しかし、もしこれが小説の一文だったとしたら。
確かに正確な訳で内容も原文と合ってはいますが、こんなガチガチの文章が延々と続いて、小説は面白いでしょうか?
少し、書き直してみましょう。
「天気がいいので、妻と買い物に行くことにした。」
これならどうでしょうか。少し読みやすく、小説らしくなったのではないでしょうか。
小説であれば、恐らく前後の文脈から買い物にいくのは今日のことだと分かりますし、「妻と」と言えば必然的に「一緒に」という意味も含まれていますので、「今日」、「一緒に」というワードは省きました。
「です、ます調」の冗長を変えてみる
更に、なんとなく退屈で冗長的な印象を与える「です、ます調」から、「だ、である調」に変えました。
この、「余計なワードを省く」という作業と、「語調の選択」が、翻訳では必要不可欠になっています。より良い訳文を書くには、これらのスキルに磨きをかける必要があります。
小説の翻訳の話になったので、もう少し続けると、余計なワードを省くだけではなく、小説翻訳では時に「ワードを付け足す」という作業も必要になります。
英和翻訳ではむしろ、こちらの作業の方が多いかもしれません。これは、英語と日本語ではその性質が大きく異なるためです。
英語は、出来るだけ少ない表現で、短くシンプルにまとめる言語で、それとは正反対に日本語は多彩な言葉による豊かな表現で、文章に深みを持たせようとする言語です。
そのため、英文をそのまま日本語にするだけでは、淡々とした無機質な文になってしまうのです。
状況を把握し、無い言葉を足して叙情的な文にすることも
“Tom is standing there.”という文章があるとします。
そのまま訳せば、「トムはそこに立っていた」ですが、トムが好きな女の子に告白をしてフラれた。
というストーリーだったとしたら、「そこに立っていた」ではなく、「そこに立ち尽くしていた」とか、「呆然とそこに立っていた」と書く方が、トムの心情が伝わって来て、文章に深みが出るのではないでしょうか?
「立ち尽くす」や「呆然と」という意味の英単語は原文中にはありませんが、大幅に意味を変えてしまわない限り、このようにワードを付け足すことは間違いではありません。
翻訳家は、文章を正確に訳すだけでなく、小説では、その文の持つ「伝えたいこと」を、訳した文章に持たせなければいけません。 これポイントです。
フラれたショックでそこに立ったまま動けないトムの様子を、より強調して伝えているのは、後者の文ではないでしょうか。
原文には無いワードを付け足すこと。日本語として自然な文章にするために余分なワードは省くこと。語調を「です、でした」か、「だ、だった」か、特に指定の無い場合は、状況に応じて決めること。
この三つを意識して、英和翻訳に取り組んでみてください。